椎骨動脈解離とはどんな病気?|亀戸脳神経・脊髄クリニック~あたま・くび・腰~|亀戸の脳神経・脊髄クリニック

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椎骨動脈解離とはどんな病気?

みなさん、こんにちは。

亀戸脳神経・脊髄クリニック~あたま・くび・腰~の院長をしています田宮 亜堂です。

先日までのうだるような暑さから、ここ数日は全国的に雨がすごいことになっていますね。

特に北陸や東北の方では記録的な降水量とのことで、本当に心配です。

 

亀戸も川が近いので、スタッフが安全に行き帰り通勤できるのか、万一のときにどのように対処すればいいのか、日頃から準備を整えておくことが大事と考えております。

 

さて、今日は時事ネタを挟んでみたいと思います。

先日、漫才コンビ千鳥のノブさんが入院しましたね。1か月程度安静が必要とのことでした。

その病名についても公表されていましたが、「椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)」というやや難しい名前でした。

以前のコラムで、この椎骨動脈解離について簡単に書いていたと思います。

「頭の後ろが痛いときは、この病気を心配しましょう」ということで書いていますので、時間がありましたらお読みいただければと思います。

https://kameido-brain-spine-cl.com/blog/首の後ろの痛みにはどのようなものがあるか/

 

今回は、この椎骨動脈解離についてもう少し詳しくお話したいと思います。

 

      後頭部の強い痛みと立ちくらみで発症した50歳の方です

      MRAをおこなったところ、椎骨動脈(赤矢印)の描出が悪くなっています

 

そもそも椎骨動脈とは何か?

 

 私たちの脳を栄養するための血管として、左右の頚動脈と脳底動脈の3本の太い血管があります。

左右の頚動脈は左右の大脳に栄養し、脳底動脈は主に頭の後ろ側にある小脳や脳幹というところに血液を送っています。

 この脳幹は非常に重要な部分で、大脳からの神経を束ねまとめて脊髄神経に送る場所であり、意識の中枢がある場所であり、そして心臓や肺を動かす司令部分でもあります。また私たちの五感である目や耳、口を動かす脳神経の核がある重要な場所でもあります。

 そんな大事な脳幹を栄養する脳底動脈は1本しかありませんが、そこに流れ込む血管は左右2本あります。それが「椎骨動脈(ついこつどうみゃく)」です。

椎骨動脈は大事な血管なのですが、前述した頚動脈ほど太くありません。それゆえに損傷すると大変なことになってしまいますので、首の骨の中を通ることでうまく守られています。

ということで、椎骨動脈と呼ばれる理由がわかりましたね。

 

では、椎骨動脈解離とはどういう病気なのでしょうか?

 

 解離というのは、この場合血管の膜が剥がれてしまう状態を言います。

頭に血液を運ぶ動脈という血管は、大事なパイプラインなので血管壁が非常に頑丈にできています。

外から外膜、中膜、内膜の順に3層構造になっているのです。

 怖いのはその膜が破損して、破損部分から血液が勢いよく流れ込むことでどんどん膜を剥がしていってしまうことから動脈解離という病気になります。

 内膜だけの破損なのか、内膜と中膜の破損なのかにより病態は異なります。

 

内膜だけを破損した場合

 

 最も内側、つまり血液の流れに近いところで破損すると、破損した瞬間に血液は「内膜と中膜の間」に勢いよく流れ込みます。

この内膜と中膜の間のスペースを偽腔(ぎくう)と言います。

心臓から頭に向かう血液の本来の流れに対して、偽物のルートができてしまったという意味です。

 

 この膜が剥がれて偽腔ができるときに、頭の後ろがすごく痛くなります。

 

 内膜と中膜の間はもともと強く癒着しているので、血液の流れ込みが弱まれば解離もとまります。

ただ、その偽腔に入り込んだ血液がやがて固まって血栓となるので、その分だけ本来の血液の流れる血管腔が狭くなってしまいます。

つまり、頭に供給される血液量が減ることで脳梗塞を起こす可能性があるのです。

 また解離が進行していくと、椎骨動脈だけでなくそこから分岐していくほかの血管にもダメージを与えていきますので、さらに広範囲で脳梗塞を起こす可能性があります。

 

 症状としては、左右いずれかの頭の後ろ、首の痛みを突然感じるところから始まりますが、なぜか右側の方が多いとされています。

解離が継続している間は強い痛みが持続し、その後血管腔が狭窄を起こすことで、脳への血液の流れが減り、意識障害やめまい、嘔吐、手足の麻痺などの脳梗塞症状が出現します。

幸いにも、血管腔が保たれている場合は痛みだけで終わってしまいます。

ですので、血圧を上げないようにして解離が進行にしないようにし、脳梗塞が起こっていないかをMRI検査でこまめに調べていくことが大事になります。

 

内膜と中膜を破損した場合

 

 内膜だけでなく中膜を破損した場合には、血液は一番外側の外膜と中膜の間にも入り込むことになります。その結果、血管は外に膨らむことになり、いわゆる動脈瘤(どうみゃくりゅう)を形成します。

頭蓋骨の中で動脈瘤から出血すると、「くも膜下出血」となり、命にかかわることになります。

ですので、この場合も動脈瘤が大きくなっていかないように、血圧を上げないようにして安静治療が必要になります。

 

 梗塞でも出血でも、とにかく起こってしまうと非常に危険な状態になるので、そうならないためにも早期に発見して早期に専門的な治療が必要になります。

 報道でもあったように、解離が進行している可能性がある場合は約1か月間安静にするために入院が必要になります。

以前に同じく漫才コンビ爆笑問題の田中さんが「前大脳動脈解離」という診断で入院されていましたが、そのときもそれくらいの期間を要したとのことでした。

 

 頭の後ろや首が痛くなった場合、寝違えた可能性もありますが、このような病気が潜んでいる可能性もありますので、すぐに検査をした方がよいと考えます。

 当クリニックでは、頭の後ろの痛みの場合は脳だけでなく頭から首にかけての血管についても必ず精査するようにしています。

ご心配な症状があれば、一度ご来院ください。

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