頭をぶつけた場合になる危険な病気
- 2022年9月9日
- 頭部外傷
みなさん、こんにちは。
亀戸脳神経・脊髄クリニック~あたま・くび・腰~の院長の田宮 亜堂です。
今日は、頭をぶつけたときのお話をいたします。
私自身、慌て者なのか、時々頭や顔をぶつけたりします。先日もお店の扉が開いていると勘違いして、自動扉が完全に開くのを待たずに、思い切り扉に顔面を打ちつけました。おかげさまで、ただでさえ低い鼻がさらに低くなってしまいました。幸い扉は破損せずに済みましたが、みなさんもよく磨かれたガラス扉には十分に注意してください。
ところで、頭をぶつけたときは、ときに軽いと思っていても、実は危険なことが頭の中で起きていることがあります。
それも若い方よりも、血管が脆弱だったり血液サラサラの薬を内服されたりしている高齢の方の方がリスクが高いことが多いのです。
それでは、頭をぶつけたときはどのようなことを心配したらいいのでしょうか?
急性硬膜下血腫
高齢の方になりますと、脳がやや小さくなってきますので、頭蓋骨と脳の間にすき間が少しずつ広がってきます。そのために、ちょっとした外傷でも、ぶつかった衝撃で脳が頭蓋骨に強く当たったり揺さぶられたり、また脳の表面にある血管がちぎれたりして出血を起こすことが知られています。
この場合、脳を包む硬膜という膜の下で出血するので、急性硬膜下血腫と言います。文字通り硬膜の下ですが、脳の表面に血液が溜まるので、脳を損傷することになります。
高齢の方は、脳梗塞や不整脈による血栓形成の予防のために血液サラサラの薬を飲んでいる場合が多く、そのために出血してもすぐには止血されずに、時間とともに悪化することがあります。
ぶつけた直後は意識がよくて、会話もできるし大丈夫と安心していても、実は数時間後に一気に悪くなることがあります。血液サラサラの薬を内服している場合は、軽くぶつけた程度でも早めにクリニックもしくは病院を受診することをおすすめします。
当院では、骨折がないかをレントゲンで確認の上、MRI検査で迅速に出血の有無を確認いたします。出血を認めた場合、受傷当日であれば近くの救急病院に、診療情報提供書および画像検査をいれたCD-Rを持って、急いで受診していただきます。数日経過している場合でも、翌日および1週間目で再検査をして止血されていることを確認いたします。
慢性硬膜下血腫
頭をぶつけてから1,2か月くらい経ってから、頭蓋骨と脳の間に血液がじわじわ溜まってきて血腫を形成してきます。血腫が多くなってくると脳を圧迫することで、頭痛や麻痺、ボーっとしたりするなどの意識障害を発症します。
これはほんの軽度の打撲でも起こることがあります。鴨居に頭をコツンとぶつけても、小さい孫にプラスチック製のバットで頭を殴られても、起こった経験があります。もちろん、受傷直後に頭部検査をおこなっても異常がなく、いったん安心していただいて帰宅してもらったのですが、その後1か月程度で頭痛が続いたり、なんとなく言葉が出づらいとのことで来院されて検査をしたら、血腫を認めました。
慢性という言葉どおり、少しずつ血腫が溜まってくるので大半の場合は、緊急性の程度は少ないのですが、麻痺があったりやろれつがまわらない場合、意識がはっきりしない場合はすぐに手術が必要なこともあります。
ですので、具合が思わしくない場合は、すぐに頭の検査をすることがまずは安心への第一歩になります。出血があっても適切に診断されて治療されれば、後遺症が軽く済む可能性が高いので、気になる症状があれば早めに受診することをおすすめします。
またその際には、血液サラサラの薬などの内服を把握することが重要なので、お薬手帳は忘れずに持参してください。