首の後ろの痛みにはどのようなものがあるか
- 2022年7月2日
- 頭痛
みなさん、こんにちは。
亀戸脳神経・脊髄クリニック~あたま・くび・腰~の院長の田宮です。
今回は頭痛と関連性があるところで「首の後ろが痛い」という症状に注目してお話をしたいと思います。難しいのは、首の後ろと言っても、人によっては後頭部を指す人もいれば、肩甲骨に近いところを言う人もおります。一応それらの場所すべてを含めてを指すものとして話していきたいと思います。
かかりつけの先生に痛み止めの薬や湿布を処方してもよくならない、整体などに通ってもなかなか改善しないということで、当クリニックを受診される患者さんも多くいます。おそらく単なる首の張りや肩こり、寝違えなどであれば、その治療方法で十分治る可能性が高いと思いますが、実は首の後ろの痛みの場合にかなり危険な病気が潜んでいることがありますので、しっかり検査して診断をつけておくことが大事です。
頚椎症
頚椎とは、背骨の首の部分のことを指します。首の骨は全部で7個あります。その骨やそれを連結する椎間板、靭帯などが加齢や仕事、生活習慣などにより変形や変性を起こした結果、その中を通る脊髄神経や神経根を圧迫してしまう病気が頚椎症(けいついしょう)です。
頚椎症により神経が刺激されると、首の痛みを訴えます。この病気が問題になるのは、脊髄の圧迫による手足のしびれや痛み、脱力症状が出ることもあり、生活や仕事に支障をきたす可能性があるということです。
頚椎症の進行にともない、急に手足が動かしにくくなったり、排尿しにくくなったり、また転倒して首に無理な動きや衝撃が加わって四肢麻痺を呈する可能性があります。
首周辺の痛みだけでなく、手足のしびれや脱力などの症状がある場合は早めに首の画像検査をおこなって診断をつけましょう。頚椎の病気にはそのほかに頻度は高くありませんが、頚髄腫瘍やキアリ奇形などの病気があり、いずれも首のMRIにより診断が可能です。
椎骨動脈解離
心臓から脳に向かう血管は全部で4本あり、その中でも首の骨の中を走行する2本の血管を椎骨動脈といいます。この血管は、脳幹という意識の中枢であり、心臓や肺の動きをつかさどる部分でもある脳の一部を栄養する脳底動脈という血管に連絡しています。
この椎骨動脈の血管壁が、無理な首の動きや外傷などで突然破けて出血したり、逆に血管内が詰まってしまったりして脳梗塞を起こす病気を椎骨動脈解離(ついこつどうみゃくかいり)といいます
椎骨動脈解離の特徴的な症状は、損傷した血管のある側の「突然の激しい後頭部と首の痛み」です。かなり強い痛みの場合は、椎骨動脈解離の可能性を考えて頭と首の血管をみるMRAという検査をおこないます。
その一方で、椎骨動脈解離でも痛みがやや軽い場合は、寝違えとか首のこりと考えてしまうことも多く、その場合安易に放置してしまうで命にかかわる状況に進展していることに気づかないこともあるので、絶対に注意しなければいけません。
緊張型頭痛
MRIなどの検査をおこない、画像上脳に異常を認めないとして危険な「二次性頭痛」を否定したら、頭痛の原因は「一次性頭痛」の可能性が高くなります。片頭痛や群発頭痛がその中に含まれますが、首の後ろが痛くなる頭痛として緊張型頭痛(きんちょうがたずつう)があります。
慢性的な肩こりや首の張りがひどくなると、その筋肉の緊張によって首の後ろや後頭部がズキズキ痛くなってきます。人によっては、頭がしめつけられるような痛みと表現したり、頭や首が重く不快に感じると表現する人もいます。
緊張型頭痛の患者さんは、全国に約800万人いると推定されていますが、これはコロナ前の数字で、このコロナ禍でテレワークにより同じ姿勢で長時間にわたるデスクワークをしたり、細かい作業をする人が増えてきて、さらに増加しているとされています。
またスマホの操作のように頭を下に向けて作業することが多くなると、首の筋肉に負担がかかって緊張型頭痛が起こりやすくなります。
首の緊張が強くなると、コチコチになった筋肉の中を走行する神経が圧迫されて過剰に興奮するようになり、頭の後ろからてっぺん、あるいは耳の上あたりにビキンという痛みが放散する後頭神経痛になることもあります。
首の筋肉をゆるめるような薬もしくは安定剤などを用いて治療をおこないますが、まずは頭の中に病気がないことを確認することが大事になります。